編入体験談

2018年度:東北大学 工学部 建築・社会環境学科

自己紹介

【名前】A.S
【出身高専 学科】福島高専 建設環境工学科
【学科順位】3年次3位、4年次5位
【受験の年】2018年実施(2019年度入学)
【受験大学 受験科目】東北大学 工学部 建築・社会環境工学科(土木関係3コース)、受験科目:数学・物理・化学・TOEIC
【併願大学】埼玉大学 工学部、首都大学東京 都市環境学部、茨城大学 農学部
 ※受験した大学はすべて合格しました。

【部活や資格】3年次までバスケットボール部に所属。TOEIC 765点(4年次3月取得)。

動機

低学年の頃から漠然とレベルの高い大学に編入しようと考えていました。土木の分野では旧帝大や東工大が強いと先生に教えてもらったので旧帝大か東工大の受験を第一に考えました。

東北大には先輩が進学していたことと、科目や過去問をみて勉強が間に合いそうだと思ったことから、東北大を目指すことにしました。

勉強のスケジュール

1年~3年前期

編入試験やTOEIC用の勉強はしていませんでした。

定期試験は2週間前から勉強を始め、成績で優判定をとることをとりあえずの目標にしていました。席次も5位以内には入っていました。部活をとにかく頑張ってました。

3年

3年後期

高専卒業後の進路について考えはじめました。就職や専攻科進学ではなく大学編入学を何となく考えてました。この時期に当時の5年生の先輩方が東大や東北大に合格していたことを知り、編入に興味を持ちました。先輩に大学選びのアドバイスを頂いたり、どのような勉強をしていたかを聞いたりしました。担任の先生にも大学について聞きまくりました。インターネットで大学編入について色々と(体験記など)調べたりもしていました。

12月ぐらいに第一志望を東北大学に決めました。東北大の募集要項を読み、入試に必要な科目が数学・物理・化学とTOEICであることが分かったので、すぐに勉強を始められそうなTOEICの勉強を始めました。TOEICで高得点を取得しているバイトの先輩(非高専生)に紹介してもらった『世界一わかりやすいTOEICテストの授業』(KADOKAWA)を使って勉強していました。また、1月に基礎学力試験(数学・物理)があったので3年までに習った数学と物理の復習も同時期に始めました。数学は『高専の数学』(森北出版)を、物理は『大学入試 漆原晃の物理基礎・物理』(KADOKAWA)や『物理のエッセンス』(河合出版)を使って勉強していました。

3年春休み

3年後期と同様に数学・物理の復習とTOEICの勉強を進めていました。化学の勉強も始めようとしましたが数学・物理・TOEICの勉強で精一杯でした。

4年

4年前期

数学・物理を中心に勉強していました。数学は高専3年まで習った範囲の復習が一通り終わり、『キャンパス・ゼミ』(マセマ出版社)を使って微分積分と線形代数の知識を深めました。物理も高校物理がある程度理解出来てきたので、所属学科では授業のない大学物理をはじめました。数学と同様に『キャンパス・ゼミ』を使って勉強しました。『キャンパス・ゼミ』の『力学』と『演習力学』を進めました。TOEICと化学はほとんど勉強していませんでした。

この時期は課題や定期テストも忙しかったです。編入試験の勉強と定期テストの勉強を両立することが困難だと感じたことと、東北大の「在学中の専門科目の成績」による点数(200点満点)が評定(優/良/可/不可)でつくことが判明したことから、定期テストの勉強は最終成績でギリ優判定(80点以上)がとれる分しかやらなくなりました。

4年夏休み

数学は『キャンパス・ゼミ』と『編入数学入門』(聖文新社)を進めました。また、理解が不十分だと感じた線形代数と微分方程式は『高専の数学』に戻って復習しました。物理は『キャンパス・ゼミ』の『力学』と『演習力学』を進めてました。高校物理の力学の復習のために『物理のエッセンス』もたまにやっていました。

9月のTOEICの受験を申し込んでいたのでさすがに勉強しないとまずいと思い、『TOEIC L&Rテスト究極のゼミ』(アルク)シリーズを使って問題演習を行いました。化学は『橋爪のゼロから劇的!にわかる理論化学の授業』(旺文社)と『大学受験Doシリーズ 鎌田の理論化学の講義』(旺文社)を読んで理論化学の理解に努めました。

インターンシップは東北大に行き、研究やフィールドワークなど貴重な体験をしてきました。また、インターン中に東北大の編入生の方々とお話する機会があり、受験勉強や編入後の生活について様々な話を聞けてモチベーションが高まりました(この時、東北大編入生のほとんどがTOEICで700点以上はとっていると聞き焦りが芽生えました)。

4年後期

9月に受験したTOEICのスコアが455点でした(事件)。これはショックでした。TOEICで他の受験者と差が開いては東北大には合格できないと思ったので、数物化の勉強時間を減らし、TOEICの勉強に時間を割きました。先生と先輩に相談し、TOEICの勉強法を見直しました。リスニングの勉強の傍ら、『世界一わかりやすい英語の発音の授業』(KADOKAWA/中経出版)を読み、リスニング力の向上に役立てました。『TOEIC L&Rテスト究極のゼミ』シリーズを周回し、演習量を増やしていました。TOEICは勉強量がスコアに反映されやすく、10月に585点、11月に610点、1月に675点をとることが出来ました。4年後期は課題が多く勉強時間が激減していたので、時間を見つけて効率よく勉強していればもっとスコアを伸ばせたと思います。

4年春休み

数物化の勉強が疎かになっていたのでTOEICを受験するのは(編入試験前は)3月を最後にすることにしました。TOEIC試験日まではTOEICを中心に勉強していました。そして3月に765点を取得しました。

TOEICが終わってからは数物化の勉強を頑張りました。数学は『編入数学徹底研究』(聖文新社)を進めました。時間をかけて基礎力を付けてきたので案外スムーズに進みました。解法の理解もし易かったように思います。物理は『セミナーライブラリ物理学 演習力学』(サイエンス社)を進めてました。化学は理論化学の勉強を4年夏休みと同様に行いました。

春休みは時々東北大の過去問を見て傾向を分析しました。数学は微積分、線形代数、漸化式などから出題されていて解けそうな問題が多かったので、『編入数学入門』と『編入数学徹底研究』の問題が解ければ大丈夫だと思い安心しました。物理の出題範囲が力学は大学物理であることがほとんどでしたが、電磁気は大学物理から出題されない年もあり、割と高校物理で戦えるのでは?と思いました。受験までの残り時間が少なくなっていたこともあり大学物理の電磁気を捨てる決心をしました(今年は見事に大学物理からの出題でした笑)。熱力と波動は高校物理からの出題がほとんどです。化学は理論化学、有機化学、無機化学からの出題が基本パターンですが、たまに大学化学からも出題されます。

3月末に、zenpenが主催する大学編入学の説明会に友達と参加しました。旧帝大や東工大、筑波大など、色々な大学の編入試験について知ることが出来ました。特に、高専の低学年生には参加をおすすめしたいです。

5年

4月~6月

併願で受ける大学を決定しました。数学のみで受験できる埼玉大学と数学とTOEICで受験できる首都大学東京(都市環境学部 都市基盤環境コース)を併願大学にしました。埼玉大、首都大ともに毎年倍率が高く、全落ちして路頭に迷う…なんてことも十分考えられたので、比較的倍率が低く、口頭試問とTOEICで受験できる茨城大学(農学部)も受験することにしました。今更ですが、豊橋技大のGACを受験してもよかったかなと思います。

数学は『編入数学入門』と『編入数学徹底研究』を仕上げました。また、埼玉大と首都大の過去問を10年分くらい解きました。

物理は『セミナーライブラリ物理学 演習力学』と『基礎物理学演習Ⅰ』(サイエンス社)の力学の範囲の問題を解きました。『物理のエッセンス』などを使って電磁気・熱・波動の復習もしました。

化学は『化学重要問題集2018-化学基礎・化学』(数研出版)の理論化学の問題を解きました。

この時期は学力試験を受験する友達に勉強(数学)を教えたり、教えてもらったり、いっしょに勉強したりしました。初めての編入試験が近づいていて落ち着かない時期でしたが、周りに受験勉強をする友達がいたことは心強かったです。

6月末には埼玉大学の編入試験がありました。傾向・難易度は例年通りでした。微積分、線形代数、微分方程式からの出題で、ライプニッツの公式を用いた漸化式の証明や偏微分・重積分の計算、ベクトルの内積計算、連立漸化式、微分方程式の一般解の導出、連立微分方程式などが出題されました。自己採点の結果9.5割くらいの出来でした。面接はラフな雰囲気で5分程で終わりました。試験科目が数学のみということで受験者は多かったです(100人くらい受験し21人合格)。

7月

7月の第1週に首都大学東京の試験がありました。今年は傾向が変わり、難化していましたが、完答出来たと思います。3次元空間内での空間図形とベクトルに関する問題(難易度高め)、3次正方行列のn乗計算、微積分の計算、関数のマクローリン展開、極限値の導出、同次形の微分方程式の一般解の導出などが出題されました。受験した都市基盤環境コース受験者は例年より多かったです(27人受験し6人合格)。面接は若干威圧的できっちりした面接という印象でした。首都大の試験が終わってからは茨大の口頭試問に向けて高校物理の復習をしておきました。

7月の第2週に茨城大学の試験がありました。口頭試問(7分野から2分野選択)を面接中に行う形式の試験で20分くらいで終わりました。口頭試問は数学と物理を選択しました。全部で10問出題されましたが、すべて簡単な問題でした。待ち時間が長すぎて疲れました。

7月の第3週以降に埼玉大、首都大、茨大の合格発表があり、すべての大学に合格していました。気持ち的にも余裕が生まれ、本命の東北大受験に向けて勉強もラストスパートとなりました。

7月の後半は物理と化学の勉強をしました。

物理はこれまでに使用した教材の総復習をしました。理解が不十分な箇所や理論・解法を忘れている箇所を無くすことを目標にしました。また、直近3年分の過去問にチャレンジしました。

化学は『化学重要問題集2018-化学基礎・化学』の理論化学の問題の残りを解きました。この時点で有機化学と無機化学がノータッチ状態だったので焦ってました。

8月

数学は『編入数学過去問特訓』(聖文新社)の微積分の問題のみを解きました。過去問は直近3年分を解きました。

物理は7月後半同様に総復習をしました。

化学は有機化学を『橋爪のゼロから劇的!にわかる無機・有機化学の授業』(旺文社)と『橋爪のこれだけで合格!有機化学25題』(旺文社)を併用して勉強しました。

そして気付けば東北大入試日の前日でした。前日は仙台駅近くの自習室で数物化の復習を軽くしていました。

試験当日

試験内容

無機化学ノー勉で、化学の過去問を一度もやらずに試験に突撃することになってしまいました。

数学は大問1が媒介変数表示された関数の概形や曲線長、直線と関数で囲まれた領域の面積などを求める問題で、大問2は2つの球面がつくる交線に関する問題、大問3が正方行列の対角化やn乗を計算する問題でした。大問1→大問3→大問2の順に解いていきました。大問1と大問3は完答出来たと思いますが、計算量が多く、時間をかなり使いました。残りの15分で大問2に取り掛かりましたが最後まで解くことが出来ませんでした。

物理は大問1がバネを取り付けた小球(真空中/液中)の単振動・減衰振動の運動方程式の導出や条件を求める問題で、大問2が電流が作る磁界についての問題(詳細を忘れました)、大問3がピストンにバネを取り付けた空間で気体がする仕事などを求める問題でした。今年は「力学・電磁気・熱」の問題構成でした。力学はおそらく完答できましたが、電磁気は大学物理からの出題もあり3分の1程度しか解けませんでした。熱は8割程度はできたと思います。

化学は悲惨でした。出来なさ過ぎて問題の内容もよく覚えてないです。大問1がエントロピー?についての問題だったと思いますが全く分かりませんでした(大学化学からの出題らしく、それすら分かりませんでした)。大問1をほぼ白紙で終え(穴埋めの問題だけテキトーに埋めて)、大問2と大問3に取り掛かりました。化学に関しては十分に勉強出来ていなかった(していなかった)ので、解けそうな問題を頑張って探して頑張って答えを出しました。

筆記試験の出来(自己採点)は、数学:8.0割、物理:7.0割、化学:3.5割程度だと思います。

面接

筆記試験の翌日は面接試験になります。15分間、受験者1人に対して面接官5人の面接でした。面接では次のようなことを聞かれました(首都大と埼玉大の面接でも同じようなことを聞かれました)。

  • 志願動機
  • 得意科目と不得意科目
  • 長所短所、自己PR
  • 勉強関連で頑張ったこと
  • 数物化の試験の出来、合格できたと思うか
  • 卒研のテーマ、進度
  • 卒研の内容(目的、どのように役に立つのか、等)
  • 高専の授業について(○○という科目では何を学んだのか)
  • 併願している大学名と合否
  • 東北大学が第一希望か否か
  • 学部卒業したらどうするか(院進するか、希望就職先はどこか)
  • 就職後、どのように活躍していきたいか
  • 学会で発表した経験はあるか
  • インターンシップで何を学んだのか

オーソドックスな質問が多かったです。しっかり準備すれば大丈夫だと思います。

試験の1週間後に合格発表があり、合格していました。化学が出来なかったので不安でしたが合格出来てよかったです。

後輩へのメッセージ

受験勉強をしているとき、編入学試験を経験した先輩の体験記はとても役に立っていたので、私も編入学試験を経験した一人として今回この体験記を書かせていただきました。少しでも参考になることがあれば幸いです。

私が所属している高専から大学に編入学する学生は決して多いとは言えません。中には才能がない、成績が良くない、頭がよくないといった理由で大学編入学を諦めてしまう人もいるかもしれません。ですが、編入学試験で課せられる限られた科目に対して十分な対策をすれば、大学に合格できる可能性はあります。編入学試験はお得でコスパのいい試験です。努力でカバー出来る部分も多くあります。編入学というチャンスが与えられた高専生はそれだけ恵まれているのだと思います。

自分の能力にフタをして小さくまとまってしまうのは非常に勿体ないことだと思います。ぜひ、編入学試験にチャレンジしていただきたいと思います。最後までやり遂げれば、きっと第一志望の大学にも合格出来るはずです。

おすすめの教材

数学

  • 『編入数学徹底研究』(聖文新社)
  • 『編入数学過去問特訓』(聖文新社)
  • 『編入数学入門』(聖文新社)

『編入数学徹底研究』と『編入数学過去問特訓』は編入試験を受験する高専生の間ではメジャーな教材なようです。掲載されている問題は良問ばかりで、編入試験で同じような問題が出る可能性が高いです。『編入数学入門』は使ってる人は多くないみたいですが、ベクトルや空間図形の勉強には適した教材だと思います。上記は演習用の教材です。演習をこなして解法を習得することはもちろん重要ですが、理論を理解し、様々なパターンの問題に柔軟に対応出来るようになることも必要です。

物理

  • 『物理のエッセンス』(河合出版)
  • 『セミナーライブラリ物理学 演習力学』(サイエンス社)

高校物理に関しては『物理のエッセンス』に掲載されている問題で十分戦える気がします。同シリーズの『名門の森 物理』(河合出版)の問題を解いて応用力を付ければ怖いものなしだと思います。大学物理は自分のように学校で授業がない学生は『キャンパス・ゼミ』(マセマ出版社)などで理論的な部分を固める必要があります。問題演習であれば『セミナーライブラリ物理学 演習力学』や『電磁気学演習』(サイエンス社)がおすすめです。内容がほぼ同じである『基礎物理学演習』(サイエンス社)よりも解説が詳しく書かれている印象を受けました。好みの問題かもしれません。自分に合う方を使いましょう。

化学

  • 『大学受験Doシリーズ 鎌田の理論化学の講義』(旺文社)
  • 『橋爪のこれだけで合格!有機化学25題』(旺文社)
  • 『化学重要問題集2018-化学基礎・化学』(数研出版)

化学弱者なので化学の教材については偉そうにアドバイスなんてできませんが笑、『大学受験Doシリーズ 鎌田の理論化学の講義』を使うと理論化学の内容の理解が深まりました。図も多く載っているのでイメージがわきやすいです。『橋爪のこれだけで合格!有機化学25題』と『化学重要問題集2018-化学基礎・化学』は演習目的で使いました。短期間で効率よく問題を解く力が身に付くのでおすすめです。

TOEIC

  • 『世界一わかりやすいTOEICテストの授業』(KADOKAWA)
  • 『TOEIC L&Rテスト究極のゼミ』(アルク)
  • 『スタディサプリENGLISH-TOEIC L&Rテスト対策』(リクルートホールディングス)

『世界一わかりやすいTOEICテストの授業』シリーズは1周するのにそれほど時間を要さず、TOEICテストの概要や解き方のポイント、TOEICで必要な英文法や英単語を学ぶことが出来ます。このシリーズの単語帳は単語の成り立ちや由来などが書かれていて暗記量が少なくなり覚えやすくなるのでおすすめです。『TOEIC L&Rテスト究極のゼミ』シリーズは掲載されている問題量が多く、解説もちゃんと書かれているので演習目的として使うと良いと思います。 また、TOEICの勉強法は『スタディサプリENGLISH-TOEIC L&Rテスト対策』の関正生先生の授業動画を参考にしていました。

TOEICは早い段階で目標のスコアを達成できると受験では有利になるので、ぜひ頑張っていただきたいです。