編入体験談

2025年:九州大学 芸術工学部 未来構想デザインコース

自己紹介

名前:澤拓郎
出身高専:豊田高専 電気・電子システム工学科
学科順位:1~4年次:1位(オールA)
受験年:2024
受験大学(受験科目):九州大学芸術工学部未来構想デザインコース
併願大学:なし
部活や資格:ロボコン(1年生)、軽音部(3年生)、美術部(2年生〜4年生)TOEICスコア:870(R:435、L:435)
Instagram:
TwitterID:sawa_takuro

なぜ編入をしようと思ったか

中学生の時から高専から大学編入して、工学部で博士号を取りたいと思っていました。そんな中で4年間生活していたら「アーティストしながら博士とって研究できたら最高だなぁ」という考えになりました。昔から芸術が好きで、高専時代に地元の市民展や記念式典でいろいろ賞をいただいたり、中学時代の恩師が立ち上げられたNPO法人で理事、アーティストとして活動していく中でそういった気持ちが強く芽生えていきました。

工学部の博士課程の勉強とそういった活動は両立できるのだろうかと色々考えている中、あわよくば高専から編入できる芸術系なんて無いよな…と思いつつ、ダメ元で調べたら芸術工学部を発見しました。アカデミックな視点から語ることも、直感のままに自分のスタイルで作品を作ることもできるアーティストになりたい。そんな思いから芸術工学部の未来構想デザインコースへ編入することに決めました。作品を作りたいという思いが強く、落ちたらアーティスト一本で頑張ろうと決意して併願はしませんでした。

科目ごとの勉強方法

数学

ここ数年で全体的に難化傾向にあります。芸工の編入数学は主に、場合の数・確率、線形代数、解析学の3本立てです。(去年から場合の数・確率が大問1に出題される傾向となったんです。これは衝撃的でしたね。)基本的に、旧帝大などの編入数学は網羅系の編入試験参考書をやっていても「本番試験で解けるか?!」と思うような難しい問題が出題される可能性があります。芸工の傾向としましては、そのような難問は多くても全問題の中で2、3問ぐらいだと思います。そのため、他の問題がしっかり解けていればあまり大差ないと考えていますので解けなくとも悲観することはないと思います。そして、基本的には問題が次の問いにつながるように作問されてますので、前問題が誘導になっていることが多く、さらに答えを逆算して考えることを意識すると難問も解けるかもしれません。過去問は良問が多く理解を深めることに役立ちますので、かなり早めに触ることを強くお勧めいたします。

編入試験用に使用した参考書、資料

(定期試験に使用した参考書は除く)

  • 編入試験徹底研究
  • 編入試験過去問特訓
  • 大学編入のための数学問題集
  • 編入試験徹底演習
  • 高専の数学Ⅰ〜Ⅲ
  • ベクトル、行列、行列式徹底演習
  • マセマ線形代数演習
  • 大学高専生のための微分積分学Ⅰ〜II
  • 青チャート確率分野
  • ハッと目覚める確率
  • 受験の月の確率分野
  • 細野確率
  • 先輩が研究室に残した過去問題集
  • 芸術工学部過去問(15年分)

上記の参考書について初見で解けなかった問題はペンでマークして、2回目も解けなかったものはファイルにまとめていました。そのマークした、ファイルにまとめた問題をひたすらに巡回していきました。

確率

確率に関してはまだ2年間しか傾向が出ていないため、こうするべきと断言するのは難しいです。

例えば去年(2024)の大問1は経路問題で、前半の設問は知っていれば難なく解けると思いますが、後半珍しい経路の変更をしたり、最終問題はシグマを使い場合の数を答える問題であったり、さらに初傾向であったということでこの年の正答率はかなり低かったのではないかと予想しています。今年(2025)は1からNの整数をK個の部分集合に分けたときの場合の数・確率の問題で、全体的に比較的メジャーな問題だと感じました。以上のことから大切なのは知らない問題のパターンに遭遇しないようにすることだと思います。自分は去年の問題から大問1に確率が来るという傾向に変化するだろうと予測していましたが、何が出るのかについては全く検討がついておりませんでした。そこでとりあえず未知の問題のパターンを無くすことを意識して対策しようと意識しておりましたので、上記にあげた参考書の確率分野を一つの対策ファイルにまとめ、全体像を把握していたため対応が可能だったのだと思います。(特に受験の月の確率分野は細かいことが懇切丁寧に書かれていますので、パターン化されているという点、視野が広くなるという点でお勧めしたいです)

線形代数

出題幅は広いですが、前半の設問は網羅系の編入試験問題集で十分対応できる問題だと思います。しかし最終問題の設問はユニークなものが出題されることが多いです。
例えば過去の例では最終問題にねじれの位置の証明問題(2020)、2次形式に回転行列を作用させた時の係数による連立方程式(2022)、3次元における変換行列からある平面上の2次変換行列を導く(2023)といった他の編入問題ではあまりみかけない特殊な例も出題されています。

こういった試験中に戸惑いが生じるような問題は優先順位を下げて、他の問題へシフトすることを強くお勧めいたします。また、戻ってきたときに閃くことがあるので落ち着いていきましょう。

解析学

特に積分の問題が非常に多く出題されます。微分は積分の問題の誘導として出題されることが多いです。そして、それ以外に特に芸工の解析分野は「一筋縄ではいかない重積分」が出題されることが特徴です。

例えば、極座標変換後に接触型だと気付きにくい重積分(2020)(変換しなくても解けますが)、部分積分が繰り返される故にミスをしやすい重積分(2022)、y軸に並行な境界の極表現r=1/cosθを積分範囲にもつ重積分(2023)などがあります。これも、戸惑ったら優先順位を下げて他の問題を解くようにした方がいいかもしれません。あと、関数の増減表が鍵となる問題がここ2年間で出題されています。デカルトの正葉線に関する問題(2024)、絶対値がついた場合わけ関数の最小値を求める問題(2025)です。関数を描画する技術を高めておくといいと思います。

物理

存在しない

化学

存在しない

英語

数年前から筆記試験からTOEIC評価になりました。多くの大学がTOEICを試験に使用するようになりました。東大、京大、科学大は未だに筆記ですね。これ以外の大学を希望していて、もし早い段階から編入試験の対策をしたいと思う人は確実にTOEICを優先してください。これは何回も受けれますし、保存も2年間効きます。旧帝大レベルは700後半以上あれば、安心して戦えると言われておりますのでそれを目標に頑張ると良いと思います。

まず、TOEICを意識する前(1~3年)の英語の勉強についてです。まだ志望大学が決まっていなかったので、筆記試験を想定して勉強していました。
完全に同年代の高校生の勉強と同じことをしていたと思います。

文法書
  • Forest
単語帳、連語帳
  • 鉄壁
  • ネクステージ
  • 解体英熟語
長文読解
  • 英語長文問題精購
  • やっておきたい英語長文
英文解釈
  • 基礎英文解釈の技術100
  • ポレポレ
  • 英文読解の透視図

単語帳に関しては通学時に見て、その日覚えたものを寝る前に読むことをしていました。あと英文解釈が個人的には合ってた勉強法だったみたいです。これを、主軸に単語、連語、文法を総合的に吸収していきました。透視図までいくと、入試レベルの英文を読むのが楽になってくる感じがしました。このときに読解力がついたのだと思います。

四年生になってからTOEICを意識するようになりました。リスニングのためにシャドーイング、マンブリングをはじめました。この時期は物理、化学(この時は併願しようと考えていました)、数学を意識に入れていたので、前よりは英語の勉強量は減ったかもしれませんが、英単語帳やPart5~7の問題をしたり、毎日英語に触るようにしていました。

文法
  • でる1000
  • 公式問題集
単語帳
  • 金、黒、暗黒のフレーズ

形式に慣れることが大切だと思いますので時間を測ってやることをお勧めいたします。四年後期の最初の頃に870(R:435、L:435)を取りました。

専門科目

存在しない

試験当日

試験内容

数学

去年は計算量も多くイレギュラーな問題が続き難化したと思いますが、今年は普通の難易度という印象でした。併願大学が無かったので十分に対策をすることができ、特に止まることなく解き切ることができました。その後、見直しをして無事に終了しました。

大問1:場合の数・確率

1からNまでのN個の正の整数をK個の部分集合に分ける問題

大問2:線形代数

M^2=Mとなるn次正方行列の諸性質に関する証明問題

大問3:解析学

絶対値がついた関数g(t)の概形、その関数の積分値f(x)に関する問題

大問4:解析学

標準レベルの重積分に関する問題と重積分を用いた単積分の証明問題

面接

ポートフォリオ

写真で伝えることができ、話も膨らむのでポートフォリオは必ず作った方が良いです。最も重要なのは、文字情報の量を抑えることです。実際にポートフォリオを見ていた先生方もパラパラ見る感じなので、ヴィジュアルメインで作品を大きく載せたり、わかりやすいものにすると良いと思います。

実際に活動してる様子の写真をページいっぱいに敷き詰めたり、見開きで巨大な作品を掲載したりしました。

他の工夫として、未来構想デザインコースは「社会構想」、「アート・デザイン」、「生命・情報科学」の三つの分野を組み合わせたコースなのでそれに合わせて「活動」、「受賞作品」、「学会発表」という構成で作成しました。(作戦として四年生の春休みに卒研内容をおおかた終わらせて、夏に学会発表してポートフォリオに掲載したりや面接で話題にできるようにしました。)

面接

全体として15分ほどで、黒板の前の教卓に座って5人の教授を前に行われました。面接の前には待機する教室が準備されているので、そこで気持ちを落ち着かせると良いです。内容についてはZENPENのいろんな先輩方の面接の質問をまとめて喋れるようにするといいと思います。あと最初の自己紹介、志望動機、さらにポートフォリオの内容は深掘りされますので、その時に話すキーワードについては知識を深めておくといいです。

  • 自己紹介、志望動機を教えてください
    • 自己紹介、志望動機、ポートフォリオに関する質問はかなり深いところまで聞かれました。本当に専門的な話だったので割愛します。以下の質問は受験生全体に関わるものかなと思います。
  • 美術をアカデミックに学んだ経験はありますか
  • なぜ高専に進学したのですか
  • TOEICの点数が高いと思うのですが、どのように勉強しましたか

これらの質問の最後に先生が「既に未来構想を体現してると思います。」と仰ってくださった時に今までの努力が報われたような気がしました。

後輩に伝えたいこと

結果無事に合格いたしました。クラスの中で進路が決まる最後の一人だったので、教室でみんなの前で合否を確認しました。受験番号を見て「あった!」と叫ぶとみんな「うおー!!!」「おめでとう!!!」と拍手をしてくれたのはすごくいい思い出です。同級生はみんな本当に優しくて、元気があって五年間すごく支えられてきたんだなとしみじみ感じました。

もしポートフォリオを見せて欲しい、試験について気になることがある、過去問(15+今年の1年分)、解答、面接資料が欲しいなどありましたら、上記にインスタグラムのURLを載せたので気軽に連絡ください!

オススメの参考書

上記の通りです