2023年1月、早稲田大学より以下のようなプレスリリースが発表されました。
全国の高等専門学校生を対象とする新たな編入学制度(指定校推薦)を開始(2023年1月16日)
要点としては以下の3点となります。
- 早稲田大学理工系3学部において、高専向けの推薦編入制度が新設された
- 一部を除き2年次編入が主となるが、高専生専用の推薦編入枠が用意された
- 第一期は2024年度編入学より(2023年度の新5年生から対象)
実際に早稲田大学の担当の先生方から伺った情報を交えながら詳細を解説しつつ、ZENPENなりにどのような高専生におすすめできる制度なのか検討していきます。
※本記事には、早稲田大学の担当の先生方への取材で得られた未確定の情報も含んでいます。正式な内容は早稲田大学からのリリース等を参考にしてください。
※ZENPENは原則特定の大学のPRなどは行いません。しかし、本件は多くの高専生の選択肢が広がる有益な情報であるため、あくまで客観的な目線で取り上げたいと考えています。
この制度はどのようなものなのか
高校→大学への入試においては、いわゆる「指定校推薦」という制度が存在します。これは、大学側が全国の高校に推薦枠を用意し、その枠内で優秀な学生に受験をしてもらうものです。
今回の新制度は、上記の仕組みを高専にも応用したものとなります。特に注意しなくてはいけないのは、あくまで「どの高専」の「どの学科」に推薦枠を与えるかは早稲田大側が決めることであるため、早めに各高専の担当の先生または事務に確認をする必要があります。
【本入試に関する早稲田大学の問い合わせ先】
早稲田大学 理工センター 入試・広報オフィス
住所:新宿区大久保3-4-1,早稲田大学 西早稲田キャンパス 51号館1F
アクセス:https://www.waseda.jp/top/access/nishiwaseda-campus
メールl:fse-undergraduate@list.waseda.jp
電話:03-5286-3808
出願にあたっては高専の学校長からの推薦が必要であり、それには条件が存在します。また、通常の国公立大学への編入とは仕組みが少し異なる点もあります。それらを次項で説明します。
特に着目すべきポイント
今回の新制度においては、大きく5つの着目すべきポイントがあります。
- 早稲田大学理工系3学部の全てに出願できるわけではない
- 学科順位が上位10%以上である必要がある
- 筆記試験はない可能性が高い
- 2年次編入が主となる
- 国立大と比較して、学費に差がある
それぞれを解説します。
①早稲田大学理工系3学部の全てに出願できるわけではない
「この制度はどのようなものなのか」の項でも説明したとおり、今回の新制度はあくまで指定校推薦です。自身の高専がそもそも指定校として定められているのか、自身の学科は早稲田大学理工系3学部のうちどの学部・学科に出願する権利があるのか、を確認する必要があります。
進路指導の担当となっている高専の先生や、教務などの高専の担当事務へ問い合わせるようにしましょう。
②学科順位が上位10%以上である必要がある
出願資格には以下のように明記されています。
e. 学業成績において、次の基準を満たす者。
① 4年次の学年の学科現員に対する学業成績の席次が、上位10%以内の者
② 席次を定めない高等専門学校では、在籍学校長が①と同等と認めて推薦する者
1学科40名程度である場合は、4年次の席次が3-4位以内である必要があります。なお、リリースの文章を読む限りは1-3年次の席次は加味されない模様です。
③筆記試験はない
リリースには明記されていませんが、早稲田大学の担当の先生方への取材では、筆記試験は検討されていないようです。また、当然のことながら面接は実施されます。
加えて、出願時にTOEFL-iBT、IELTS、TOEICの提出が求められます。
④2年次編入が主となる
下記の図のとおり、1部を除き2年次編入が主となります。この意図についてはリリースにも記載されています。
また、早稲田大学の担当の先生方への取材では、この意図として以下のような点もあると述べられていました。
新設の制度であるため、高専→早稲田大の単位変換がどの程度されるのか未知数であるため。安易に3年次編入として単位変換数が不足してしまうと、単位取得のための多忙になってしまうことや、留年することを避けるため2年時編入とした。
加えて、単位変換についての早稲田大側の姿勢は以下のようなものであるようです。
まずは合格後に学生とコミュニケーションをとり、その後の高専5年での履修状況を鑑みながら想定単位変換数を提示する。そして入学後に確定の単位変換数を提示する。事前に単位変換の見込みを共有することで、編入後に予期せぬ形で学業のスケジュールが逼迫することを避けるようにしたい。
⑤国立大と比較して、学費に差がある
国立大の学費は年間約50-60万円です。一方、早稲田大の学費は年間約140-150万円です。3倍弱ほどの差があるため、事前に学費面については十分に検討する必要があります。
奨学金を利用する場合についても、事前に調査および出願を行うことが大切です。特に(学生支援機構ではない)奨学金を狙う場合については、早めに申し込みを締め切っている場合があります。仮に本制度を利用して早稲田大学を受験する、且つ奨学金の利用も見込んでいる場合は、受験と同時に奨学金の情報収集をするとよいでしょう。
2023/04/08 追記
早稲田大学独自の給付型奨学金である「めざせ!都の西北奨学金」の対象を、高専からの編入生にも拡大することが決定された模様です。
・早稲田大学理工学術院ニュース:https://www.waseda.jp/fsci/news/2023/03/16/25779/
・早稲田大学奨学課ニュース:https://www.waseda.jp/inst/scholarship/aid/programs/pre-approved/
こんな高専生におすすめ
現時点での情報をもとに、特に以下の条件に当てはまる高専生は本編入制度を利用してみることをおすすめします。
- 学科の席次が上位10%以内である人
- 国公立大学にはない多様な雰囲気で学びたい人
- 編入試験に時間をかけずに、高専の卒研を頑張りたい人
- じっくりとキャンパスライフを楽しみたい人
ZENPEN編集部より
いかがでしたでしょうか?本記事では2023年1月に発表された早稲田大学の新しい編入制度について解説をしました。以下ZENPEN編集部、鈴木と深山からのコメントです。
鈴木
自身が編入をするときは私立大の選択肢はそもそも脳内になかったので、今回のような制度は非常に面白いなぁと思いました。
取材をする中でも、先生方の学生をサポートする姿勢が強く、このあたりも国公立の大学と雰囲気が違うなという感覚もありました。決して国公立が不親切というわけではないのですが、単位変換等に対するサポートの姿勢は他の大学ではあまり見られないかと思います。
ただ、やはり気になるのは学費です。自身が高専生だった場合にはぜひこの制度にチャレンジをしたいなと思う一方、学費面が強く壁に感じてしまうかなと思いました。高専生だけ特別に学費を下げることは不可能かなと思いますが、早稲田大側から奨学金の丁寧な案内などがあると、よりチャレンジしやすくなるのかなという印象です。
私立大学の雰囲気は高専と比較すると大きく違うものかなと思います。ガラッと環境を変えたい人、早稲田大に気になる研究室がある高専生にとっては、要注目の制度だと思います。
深山
早稲田大学の先生方が、高専生にとって一番良い方式を可能な限り定めたと取材の際に仰っており、僕も同様に感じました。しかし一方で、学科の方針上避けられなかった2年次編入という制度が受け入れられないのではないかという心配もなさっていました。
僕自身東京大学に2年次編入をしましたが、学生生活にとても満足しています。サークルやプロジェクトへの参加の機会に恵まれたことで様々な人との関わりを持つことができ、「学生生活」を他の人より長く過ごせたことは人生の大きな資産になりました。
ただ、どの大学に入学しても同じですが、奨学金やイベントなどは自分で情報を収集して動かなければ十分に活用することはできません。入学前から自分の人生に責任を持って取り組む必要はあるでしょう。
より多くの経験を積みたい、チャレンジしたいと考えている高専生は応募してみてはいかがでしょう?